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舞台『鬼夜叉』その1

ネタバレありレポを追記しました<2007-04-18>

昨2006年8月、劇団め組夏公演『Assassin(アサシン)彰義隊後日譚』の会場でチラシを見て以来待ち焦がれ続けた『鬼夜叉』再演(べきらは今回が初見)、その初日公演を観終えて家路に着く途中、見上げれば空には清らかな月、地上には夜目にあでやかな桜の花々……さきほどの舞台に登場したモチーフがそのまま現実の世界にも存在しています。
まさに今の季節にぴったりと適合した、春の夜の夢のように幻想的で美しい舞台でした。
室町幕府三代将軍足利義満と能役者世阿弥をモデルに、劇団を代表する名花二輪――新宮乙矢さんと藤原習作さんが、爛漫と咲いて散るせつない悲恋の絵巻を繰り広げてくれます。
藤原さん演じる将軍の胸に顔をうずめる寸前、新宮さんの鬼夜叉の頬を伝い落ちたひと筋の涙の意味とは――男女の愛欲のレベルではない、純粋さと高潔さに深く心打たれました。
そして、もっとも大切なことは、流れていく時間のなかで人間が幸せをバトンタッチしていくということ――最後の無言劇のシーンに作家のバランス感覚が表現されていたとおもいます。
モダンなデザイン感覚を取り入れた質感豊かな衣装が舞台世界に奥行きを与えます(なかでも、モノトーンに銀を利かせた将軍の装束が素敵でした)。
効果音を使わないぶん、研ぎ澄まされた精密度とスピード感ある殺陣も存分に楽しみました。

劇団め組
『鬼夜叉』
2007年3月30日金曜日~4月3日火曜日
吉祥寺シアター

作:合馬百香
演出:与儀英一

一般席 4,500円/学生席 2,500円 (全席指定・税込)
※学生席は劇団め組のみの扱い

べきら観劇日:
2007年3月30日金曜日夜の部(観劇1回目/初日)
2007年4月 1日日曜日夜の部(観劇2回目)
2007年4月 3日火曜日昼の部(観劇3回目/千秋楽)

上演時間:約2時間(休憩なし)

【物販】
舞台写真50種類、@150円、後日郵送(郵送料は劇団が負担)



・劇団サイトによる公演情報:
http://www.yogipro.co.jp/works/hannosyou/oniyasha2007.html

・シアターガイド サイトによる公演情報:
http://www.theaterguide.co.jp/search_result/paid/005700.html

・カンフェティ サイトによる公演情報:
http://www.e-get.jp/webap4/megumi/kouen/01/index.html

・BACK STAGE サイトによる公演情報:
http://www.land-navi.com/backstage/link/47/tokyo/kouen/2007/4/megumi/index.htm

・劇団サイトによる初演(2006年)『鬼夜叉』公演情報:
http://www.yogipro.co.jp/works/hannosyou/oniyasha.html

・舞台『鬼夜叉』その2→

↓ネタバレありレポ


圧巻だったのは、タイトルロールの鬼夜叉を演じる新宮乙矢さんの、「恋をすること」に徹した見事さでした。
劇団め組ファンクラブ「MegumiClub」での私・べきらの指名役者さんは、鬼夜叉を寵愛した将軍役=藤原習作さんなのですが、劇中で藤原さんを見つめるときの鬼夜叉=新宮さんの眼差しのなんとせつないこと、無償の想いの深いこと、誰にもいわず心中にたたえられた涙のはかりしれないことにしみじみと感動に浸ると同時に、うっすらとした嫉妬の念が鬼夜叉に対して湧き上がるのを自覚したのには自分でも驚いてしまいました。
藤原さんに限らず好きな俳優さんが女優さんとラブシーンを演じるのを観てもふだんは焼きもちを焼くことなどないし、むしろうんと素敵に情濃く演じてもらってうっとり酔わせてくれるのを望む(代理経験?)ほうなのですが、家庭、子ども、嫁姑関係などもろもろの事柄とは無縁の、男同士ゆえの純粋で深いつながりを持つことができる鬼夜叉が羨ましくて、ねたましさを覚えてしまったのでしょう。

史実によれば、室町幕府第3代将軍足利義満は息子の義嗣(当時14歳)の元服式を宮中で親王と同格扱いで行うという前代未聞の行動を実行し、自分の直系の血筋を皇統に入りこませる(義嗣を天皇にする)という大望がついに実現したかのようにみえた直後、当の元服式の翌月に突然謎の病死をしています。
これは朝廷側が義満を暗殺したのではないか、その実行者は義満の寵愛を受けていた世阿弥ではないか、実は世阿弥一族は芸能者集団であると同時に楠木正成の流れをくむ朝廷擁護の諜報機関員だったのではないか、という説をベースに作られたのが今回のストーリーです。
スパイとして送り込まれたとは知らず、将軍は美少年・鬼夜叉を溺愛します。
ところが、鬼夜叉もまた将軍を愛してしまったところから悲劇が始まります。
物語は↑元服式の直前、地方巡業から京にもどった鬼夜叉一座に楠木本家から将軍暗殺の指令が伝えられるところから一挙に盛り上がりをみせます。
父親である座長と座員達の前で鬼夜叉は一族の使命にそむいて将軍を守る宣言をし、「御所さまの寝所には必ず私の姿があるとおもえ――枕の下に刀をしのばせて」(←正確なセリフではなく、べきらの記憶によるものです)と座員や父親を捨てて将軍のもとに走ります。
「若師匠」と鬼夜叉を慕ってきた座員達のショック、なかでも息子を敵の寵童に差し出したことを後悔する酒井尊之さん演じる座長の苦悩が胸に迫ります。
実は鬼夜叉は楠木本家からの指令よりはるか前から将軍の野望を感じ取っていて、将軍と刺し違える決意を固めていたのでした。
夜空の月は人が手に入れることはできないもの、だからこそ人は歌に詠み、絵に描き、私は舞にすることでそれぞれの心のなかに月を得ることができるのですよ――皇統乗っ取りという暴挙を推し進める将軍を涙ながらに諭そうとする鬼夜叉の言葉が綺麗でした。
野望にとりつかれた将軍は鬼夜叉の言葉の真意をくみとることなく、手にとれないものなど欲しくない、欲しいのはこうしてじかに触れて肌のぬくもりを感じられるお前だ、と鬼夜叉の肩に手をまわす――ひたすら鬼夜叉を求め、誰も信用しないなかで鬼夜叉にだけ心を許す将軍と使命の相克にさいなまれる、つらそうな新宮さんの様子が痛いほどです。
登場したときから新宮さんが漂わせていた静かな覚悟のようなものは、すでに「心中」という結論に行き着いていた鬼夜叉の心情ゆえだったのですね。

ファンクラブ会報や劇団公式サイトに掲載された鬼夜叉役新宮さんのコメントによれば、今回の舞台は再演なので前回の流れを踏襲せず新鮮な気持ちになるように心がけたとのことでしたが、自分のすべてを捨てて将軍との恋を貫こうとする鬼夜叉の感情が新宮さんのなかに完全に入り込んでいてぶれも迷いもなく、それが劇全体を貫く太い柱になっている安定感は再演ゆえのよさなのだろうと感じました。
痛々しいほどに自分を追いつめて高まっていく新宮さんの演技を、藤原さんが「受け入れる」立場で支えているのを感じます。
このふたりのまわりに夫婦愛(将軍=正室、上皇=上皇正室)、父子愛(将軍=息子、座長=鬼夜叉)、鬼夜叉=座員の師弟愛、天皇一家の家族愛などなどがパズルのようにきっちりとはめこまれ、そのひとつひとつがとても鮮やかに見えてきて、凝縮感と見ごたえのある2時間でした。

その2へ続く――

コメント

鑑識眼

こんにちは♪
『べきら録』でお世話になっている莉緒です。こちらにまでしつこく出張って参りました(笑)。
『鬼夜叉』ご観覧レポート、その凄絶な美しさ・魅力を、閲覧者の私も想像(or妄想!?)して、まさに観てみたい気分にさせられました。さぞかし素敵な舞台だったのでしょう!!
 べきらさんは、“演じられること”の素晴らしさを、本当に沢山体験されているのですね?
こちらで垣間見る膨大な観劇キャリアが土台となって、日頃の“俳優・田中幸太朗評”が成り立っているのだな、とわかりました。
すごいですよ!!
このように“演技”“芝居”というものを熟知された目でご覧になり、その感銘を余さず表現される──斯様に鑑識眼あるファンをお持ちになって、幸太朗さんは役者冥利に尽きるのでは?…などと、端ながら推します。
 と言うのも、私のように“観劇”体験が乏しいと、舞台・映像を問わず役者さんの力量を味わう力がありません。
だのに僅かばかり幸太朗さんの演技を観て、何のかんのとおこがましくも…。お許し下さいね!!
 しかし今年の『大河』チャレンジによって、“芝居見巧者”ならぬ者をも惹きつける幸太朗さんのパワーが、広くアピールされるのでは?それも楽しみです。

 あ、こちらのテーマを外れてしまい、済みません。
外れついでにあと一つ、いつだったか触れてらした歌舞伎『蔦模様恩愛御書』はご覧になったのですか?これに関する“べきら見解”、伺いたいなと。
私は観られなかったので、ノベライズで鑑賞しました。

ようこそ

>莉緒さん
ようこそおいでくださいました。
いつも『べきら録』をお引き立ていただきまして、ありがとうございます。
私のつたない観劇体験をお褒めいただき恐縮です。
演劇の勉強をしたこともなく、芝居に携わった経験もない私ですが、舞台を観るときにもっとも大切にしているのは、シンプルに「心をぎゅ!っとわしづかみにされる瞬間」です。
言葉にできない、その至福の体験をただひたすら求めて劇場に通っています。
莉緒さんもどうぞお心に捉えたご自身の感覚を信頼なさって、大河ドラマをはじめとするさまざまな創作作品を味わっていただきたいとおもいます。
今回の『鬼夜叉』はまさに「その瞬間」が何度も降臨した素晴らしい舞台でした。
たまたま同じ時期に同じく男性同士の恋愛を主題にした別の公演(アメリカの翻訳ものを日本人が上演)を観まして、これはこれでとてもよかったのですが、「時代劇」という美しい財産を持っている私達日本人はほんとうに幸せだな、とおもいました。
身体の線を覆い隠してしまうゆったりとした装束で抱き合う美男ふたりの様子は、なまなましいS○Xシーンやヌードがとうてい及ばない品格で強い愛を表現してくれます。
武士道という高い人間性を求める精神世界を心に共有していることも私達の宝ものだとおもいました。
このあたりは、時代劇に深い造詣をお持ちの莉緒さんならばご理解いただけると存じます。
日本人の心情を大切にする劇団め組の舞台はこれからも観続けていくつもりです。
演劇鑑賞はテレビや映像に比べてはるかに大きい拘束とエネルギーを要求されますが、それだけに得る喜びは代えがたく、やみつきになってしまいます。
莉緒さんも機会がありましたらぜひ劇場に足を運ばれることをお薦めします。

『染模様恩愛御書(そめもようちゅうぎのごしゅいん)』ですが、我が家の視聴環境ではオプション申し込みをしなければ歌舞伎チャンネルを見られないことがわかり、泣く泣く断念しました。
ダイジェスト映像をなにかの番組で見る機会があったのですが、愛之助丈の若衆姿が初々しくて可憐でした。
本火(ほんび)を使った演出も迫力があって、ぜひ東京で再演してほしいとおもいました。

・『染模様恩愛御書 細川の男敵討』公演情報:
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/osaka/2006/10/post_2.html

・小学館『紅蓮のくちづけ―染模様恩愛御書 』:
http://www.amazon.co.jp/%E7%B4%85%E8%93%AE%E3%81%AE%E3%81%8F%E3%81%A1%E3%81%A5%E3%81%91%E2%80%95%E6%9F%93%E6%A8%A1%E6%A7%98%E6%81%A9%E6%84%9B%E5%BE%A1%E6%9B%B8-%E6%B7%B1%E5%B1%B1-%E3%81%8F%E3%81%AE%E3%81%88/dp/4094216057/ref=sr_1_1/503-1945155-0994353?ie=UTF8&s=books&qid=1176153181&sr=1-1
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