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『Nf3 Nf6』

2007年の『東京裁判』初演で魅了されて以来、ほとんど毎公演観続けてきたパラドックス定数。
染まらず媚びず研ぎ澄まし精査して独自の世界を磨き、実績と評価を積み重ねてきた結果に到達したひとつの頂きのような作品です。

二人芝居連続企画のうちのひとつ。
前半は羽田沖に墜落した日航機の機長と弁護士が警察病院の一室で向かい合う『5seconds』。
(キャストは井内勇希×小野ゆたか)。
後半の今作は、虐待が繰り返される収容所での看守と囚人の物語。
看守は将校、囚人は数学者。
(キャストは植村宏司×西原誠吾)。
タイトルの『Nf3 Nf6』はチェスの棋譜。
Nは駒の一種であるナイトのことなので、「ナイトエフスリー ナイトエフシックス」と読みます。
劇団ブログ・パラブログ整数のこちらに説明。
(チェスはもちろん囲碁将棋麻雀オセロブリッジなどこの種の頭脳ゲームにまったく不案内な私は、『5seconds』観劇のとき野木萌葱主宰が今作紹介で実際にそう発音するのを聞いて内心秘かに感動しました←余談)

PDXには、どこか孤高な雰囲気があります。
冷たいとか閉じているわけではなく、受付スタッフは一般人観客の私にもホスピタリティ高く接しますし、小劇場の人気劇団からの客演も迎えますし、硬派な作風に似合わず野木主宰自らにこやかに客席誘導もします。
パラブログ整数の稽古場日記はじつにまめに更新され、内容はユーモアにあふれ劇団員同士のなごやかさもうかがえます。
(観劇後、稽古場日記に書かれた内容と上演台本を照らし合わせるのはPDX心酔者である私の無上の喜びです←余談その2)
並行してツイッターには公演ごとに登場人物の独自アカウントが登場し、こちらから話しかけるとちゃんと返信してくれたり、ときには先方から話しかけてくれたりもします。
これほどのサービス精神は、やはりより多くの観客に喜ばれたいという希望、劇団として大きくなりたいという(当然の)野心があるゆえでしょうに、どこか飄々として誰からも距離を置くかんじがするのは、これはもう野木さんの人間性なのだろうとおもいます。

奥底のほうに熱いものを持ちながら表面はあくまで冷静に、なかなかそのことを気取らせたがらない気質はPDX作品に通底しています。
静かに求道するような男達。
男女の恋愛沙汰なし。
家族の話、なし。
かっこいいアクションもない。
みんなが知っている笑いがない。
音楽に抒情させない。
つきつめる。

今作は、ついに登場人物は二人きり、です。
正確には再演ですが、劇団が今この作品に至ったのはやはり道の行きついたところのようにおもえます。
シンプルで天井の低いギャラリーの一室。
極端に少ない照明。
停電の場合は懐中電灯で続行するという覚悟の上演。
美しいものがなにもなくなってしまった世界で、美しいチェスで会話するふたりの男。
私の席からは光の当たる西原さんの顔半分と、植村さんの背中のシルエット。
チェスの手元はよく見えずルールもわかりませんが、ふたりの感情は私の全身を満たします。
こういう時間、じつに、私は「生きている」とかんじるのです。
戦争がなければ、数学を高める道を共に歩めたかもしれないふたり。
もしかしたら夢の情報技術は彼らが開花させたかもしれない。
それでも、
結局ふたりは孤独のままだったように私はおもいます。
数学という崇高で残酷な学問に魅入られてしまった以上、どんなに惹かれあっても所詮はひとり。

野木さんの作品を観ていると、近所の男の子達と遊びたくても「お前はオンナだからだめ」と仲間に入れてもらえなかった女の子だったのでは、となんとなくおもえてきます。
女性だから描ける純粋な男の世界。
PDXについて書き出したら、長文癖がとまらなくなってしまいました。
それだけ、好きなのだとおもいます。

↓まだ書きます。
『5seconds』と本作のどちらがよかったか――
甲乙はつけがたいです。
どちらも好き。
もう一度観たいのはどちら?――
どちらも観たい。
それぞれあと最低5回は。
では、どちらかをあと1回だけ観られるとしたら?――
…(悩)


西原さんの色気の分で、本作、です。
あと、もし天地が叶うなら、飛行機の井内さんとチェスの植村さんを入れ替えてそれぞれ観たいです。



パラドックス定数
第25項
『Nf3 Nf6』
2011年3月22日火曜日~27日日曜日
アートコンプレックス・センター
こりっち情報こちらの「動画」に希少な野木さん演出光景とコメントあり)

作・演出:野木萌葱

全席自由
前売2,800円
当日3,000円

べきら観劇日:
2011年3月24日木曜日15:00~

上演時間:1時間40分(休憩なし)

【物販】
上演台本1,000円
過去公演の上演台本@1,000円
オリジナルTシャツ2,000円(西原誠吾さんがデザイン)


【当日パンフレット】
B5/2Pモノクロ
配役表
STAFF
MEGAPHONE 次回作、劇団員客演情報※
MONOLOGUE 野木さんが作品を表すひとこと。
MEMORY 野木さんの芝居の書き方。本作が「見えた」瞬間。
BOOK 参考文献
※『5seconds』を4月3日日曜日に昼夜2ステージ追加上演。
東北関東大震災の影響で観られなかった人の救済がメイン。
振替についての詳細は劇団サイトに。
次回公演は第26項『トロンプ・ルイユ』8/10(水)~8/14(日)中野・劇場HOPE。
「騙し絵」というタイトルの「少しだけお洒落な犯罪物語」←仮チラシより。
出演はPDX劇団員4名+客演常連の加藤敦さんと生津徹さん。
次々回第27項(タイトル未定、新作書き下ろし)の出演者募集ワークショップオーディション情報も。
27項上演場所はあの魅力空間、渋谷SPACE EDGE!
応募詳細はやはり劇団サイトに。
後説で主宰が(WS募集対象は)「男性のみ、です」「かかってこい、というかんじで」と(←笑)


・べきらのPDX観劇履歴
『東京裁判』2007.11. レポ
『HIDE AND SEEK』2008.4.
『三億円事件』2008.9.
『怪人21面相』2008.11.レポ
『インテレクチュアル・マスタベーション』2009.3. レポ
(『五人の執事』2009.7. 未観劇)
(『東京裁判』2009.11. 未観劇)
『ブロウクン・コンソート』2010.3. ツイート1234
『元気で行こう絶望するな、では失敬。』2010.6. レポ
『蛇と天秤』2010.11. ツイート
『5seconds』2011.3. ツイート
『Nf3 Nf6』2011.3. ツイート12

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