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舞台『PANSY MAZE(パンジー・メイズ)』

男優劇団Studio Life(スタジオライフ)の若手公演です。
ライフは小説や有名少女漫画などの外部原作を唯一の女性メンバーである倉田 淳氏が独特の美的感覚で演出する手法を特徴としていますが、今回はこの手法を取り入れる以前のいまから22年前、1987年(昭和62年)に初演された倉田さんのオリジナル脚本の上演です。

結婚願望がありながら上司との不倫関係を断ち切ることができない30歳のOL・吉田幸子がこころの迷路(=MAZE)をさ迷うなかで生きる活路を見出そうとする物語です。
ヒロイン幸子役はともにライフ中堅の青木隆敏さん(Adventurerチーム)と関戸博一さん(Surviviorチーム)によるダブルキャストで、私は青木さんのチームを観劇しました。
女性役としての青木さんは、『OZ』(←私はDVDで鑑賞)でのわがままな富豪令嬢ビアンカが示したせつない恋ごころ、『夏の夜の夢』(初演・再演)の職人チームによる劇中劇でのシスビー自決シーンの悲哀と凄みが印象に残っています。
今回はオープニングの「背中」に30歳の幸子の色気、倦怠、諦め、不倫相手の男への愛憎が凝縮されていて、一瞬で惹きこまれました。
女性的なロングヘアのかつらではない、男性としても自然なショートヘア(たぶん自毛?)のまま、しかも綺麗なドレスやハイヒールを身に付けているわけでもないシンプルななりでありながらぞくっとするほど煽情的なのがまるで日本舞踊の素踊りのような魅力でした。

プログラムによれば倉田さんは泉 鏡花の『山吹』からこの作品を発想したとのことでした。
『山吹』は、姑や小姑のひどい仕打ちにたえかねて嫁ぎ先の小糸川子爵家を飛び出してきた子爵夫人の縫子(ぬいこ)が修善寺温泉の裏路で人形遣いの老人に出会い、美しい女性に鞭打たれたいという老人の不可思議な願望を叶えてやるという妖艶で官能的な戯曲です(1923年=大正12年6月『女性改造』に発表)。
満たされないOL幸子がある日突然に非日常の世界にさ迷いこんで謎の人物達に出会い、自己発見の旅をするというファンタジーな展開に『山吹』の影響がみられました。
チケットやプログラム表紙に使われている劇団員・及川 健さん(及川さんの出演はありません)によるイラストのなかの「桜」や「鯉」も『山吹』に登場するモチーフです。

ただ、私としましては今作の柱を「OL幸子の成長」にみたいというおもいがあり、そうなりますと幸子が目指す生き方と『山吹』の縫子的部分がどうにもそぐわない感がぬぐえませんでした。
石飛幸治さん演じる「ガードマン・門番」(←『山吹』の老人に相当)と幸子との関係性がみえないままなのです。
幸子は自身の内にあるマイナス要素を克服して現実社会を生きていく「開かれた」「上昇」の人であるとおもいますし(←私自身の期待?)、対する縫子は世間との関係を絶って人形遣いの老人とのふたりだけの世界に生きることを選択した「閉じる」「確信して堕ちていく」人――それはそれで羨望するのですが――であるとおもいます。
『山吹』を抜きにして作品そのものとして観ても、ラストの幸子がこれからの人生を、なにをもっとも大切にして生きていこうとしているのかをつかみとることができないままに終演になってしまいました。
青木さんが体現するスタジオライフの翳りのある色気は鏡花世界を表現するのにとても適合しているとかんじますので、次の機会には夢幻性と官能性を前面に出した改訂版作品をぜひみせてほしいです。

OL幸子を「ハイミス」(←いまや死語!)とばかにする昭和の会社の社員達(鏡花原作の姑や小姑に相当)、幸子が幻想の迷路で出会うさまざまな心理の相を象徴する男達(同じく老人が遣う白拍子姿の人形を複数に拡大)を若手劇団員が演じます。
若手の顔ぶれは昨2008年7月の若手公演『Tamagoyaki』(恵比寿エコー劇場)とほぼ同じですが、1年半でずいぶんと余裕ができたものとおもわず眼を細めてしまいました。
なかでも、原田洋二郎さんのさなぎが蝶のOL・真理の可憐さ、さらに進んだ小人1の堂々のマクベス的魔女ぶりは楽しませてもらいました。
また、冨士亮太さんの安定感が(『Tamagoyaki』に比べて)一段と増していました。
とくにダンスシーンでは、冨士さんひとりが群を抜く「世界」をつくっていました。
誰が演じるのか「登場してのお楽しみ」のバレー部員3(マコ)役は、私が観た回は牧島進一さんでした。



主催:社団法人 日本劇団協議会 次世代を担う演劇人育成公演
制作:スタジオライフ
『PANSY MAZE(パンジー・メイズ)』
2009年12月9日水曜日~20日日曜日(Adventurerチーム8ステージ+Surviviorチーム8ステージ=全16ステージ)
※Adventurerチーム、Surviviorチームのダブルキャスト公演
シアターグリーンBIG TREE THEATER
公演情報
CoRich情報

作・演出:倉田 淳

全席指定
前売・当日とも 4,000円

べきら観劇日:
2009年12月12日土曜日13:00~

上演時間:2時間(休憩なし)

【物販】
プログラム 800円
ブロマイド、タオルなどオリジナルグッズ数種。

【当日パンフレット】
B5/4P



泉鏡花 (ちくま日本文学 11)
泉鏡花 (ちくま日本文学 11)








※↑『山吹』が収録されています。

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