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舞台『赤色エレジー』

1970年代に日本の若者達を熱狂させた政治活動が下火になったころ、かつての情熱を失い、職も金もなく、半同棲状態の活動仲間の女性に寄生して虚しく生きている元活動家の男を描いた作品です。
来日16年になるドイツ人演出家、ペーター・ゲスナー氏が新たに結成した演劇ユニットProject Natter(プロジェクト・ナッター)の第一回旗揚げ公演ということでチケットを取りました。
旧東ドイツ出身という「外からの眼」をもつ演出家が、今の日本でどのような世界を描くのかに関心がありました。

もっとも印象的だったのは、主人公である「男1」(ウチダ)のふがいなさ、だらしなさ、情けなさです。
「女1」(サチコ)に紹介してもらったアルバイトをさぼり、彼女に食料を調達してもらい、帰省費用まで出させながらなにをするでもなく自堕落に過ごすだけです。
故郷に帰れば病弱な母親の世話を妹におしつけ、地元で地道に働いている友達には「東京の活動家」という虚像を演じます。
「女1」や友達に巧みに金を出させ、たかりの仕掛けが発覚すると自己正当化に徹し、反省を知らないところは確信的な詐欺犯よりもかえって始末に悪い。
それでもなぜかこんな男に「女1」は惹かれ、大家の奥さんも彼に色目を使うのです。
どこか憎めない、人をそらさない素質をもっているのでしょう。
情けないけれど魅力があって、それゆえにいらいらさせる男を寺十 吾(じつなし さとる)さんが活き活きと表現していました。
『PW Prisoner of War』(2009年3月/本多劇場)で身体を張った演技をみせた寺十さんは今回も別の意味で「身体を張っ」ていて、びっくりしてしまいました。

当日パンフレットで演出家はこの作品のテーマを「裏切り」と捉えています。
情熱を失い、あるいは情熱はもっていても形にすることができない「男1」は、自分の世界にこもって他者との関わりを避ける現代の若者に通じるとしています。
「男1」のふがいなさを強く印象付ける演出の意図がわかります。
たしかに、眼は携帯電話、耳はヘッドフォンに集中した「見ざる聞かざる」状態で駅や街中を歩き、人とぶつかっても無表情に通り過ぎる若者に呆れながらも、「悪いことをしているわけではないし……」と傍観している日本人の私がいます。
社会に参加しないことは「裏切り」であるというゲスナー氏の能動的確信が新鮮でした。

スズナリの舞台をほぼ裸の状態にして、場面ごとに大道具小道具を運び入れ、組み立ててはまた解体して片付けるスタッフワークが面白かったです。
とくに、舞台奥の「搬出入口」の引き戸のたてつけがシブくてスタッフが開け閉めのたびに渾身の力をこめているのがとてもたいへんそうで、でも観客としては楽しんでみていました。
(別役作品につきものの「ある構造物」も健在です。)
2009年の日本のいまここで、ひとつの演劇作品が作られているという実感がありました。

戯曲の原イメージとなった1970年発表の林 静一の漫画『赤色エレジー』が受付で販売されていました。
また、この漫画を題材にして翌71年に発表されたヒット曲『赤色エレジー』が劇中に流れました。
別役 実作品としての戯曲『赤色エレジー』は1980年文学座アトリエ初演です。
私は漫画、曲、戯曲とも初めてで、最初は「あかいろえれじー」と読んでしまっていました。



Project Natter(プロジェクト・ナッター)
旗揚げ公演
『赤色(せきしょく)エレジー』
2009年7月15日水曜日~22日水曜日(全10ステージ)
ザ・スズナリ
CoRich情報

作:別役 実
演出:ペーター・ゲスナー

全席指定
前売 3,800円
当日 4,000円
シードチケット(学生割引)2,500円(オフィスコットーネのみ取扱 枚数限定販売・ベンチシート)
※シードチケットは大学生以下の学生・専門学校・演劇養成所の学生に有効。当日受付で学生証提示。

べきら観劇日:
2009年7月16日木曜日19:00~
※終演後、約1時間のトークセッションがありました。
プロデューサーの綿貫 凛さんが司会をし、ゲスナーさんと寺十さんが参加、ゲストはあがた森魚さんでした。
最後にあがたさんが『赤色エレジー』の生演奏を披露してくれた贅沢なトークセッションでした。

上演時間:約1時間50分(休憩なし)

【物販】
林 静一『赤色エレジー』1,995円
赤色エレジー (シリーズ昭和の名作マンガ)









【当日パンフレット】
A4/4P カラー
表紙はチラシと同じ図柄ですが、(natter=“蛇”というよりは)トカゲが発しているフキダシのなかにプロデューサー・綿貫 凛氏の旗揚げ挨拶とこの戯曲を選んだ動機についてのコメントが掲載されています。
・林 静一「私の、別役さんの『赤色エレジー』」
・ペーター・ゲスナー「ドストエフスキーを読もう」
・配役表(モノクロ顔写真入り)
・スタッフ表
・次回予告
※Project Natter第二弾は2010年3月初旬、SPACE雑遊にて上演とのことです。
タイトルや内容についての記載はありませんが、ぜひゲスナー氏の内的発露を作品にしていただきたいとおもいます。



参考
・asahi.comより:
http://www.asahi.com/showbiz/stage/theater/TKY200907100223.html

・読売オンラインより:
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/theater/20090701et05.htm

・演劇情報サイト・ステージウェブより、ゲスナー氏インタビュー動画:
http://www.stageweb.com/2009/06/project-natter.html



<追記 2009-10-18>
・朝日新聞
2009年10月17日土曜日付け朝刊
別刷り be on Saturday
e1、e3
うたの旅人
若さの不条理にささぐ あがた森魚「赤色エレジー」
※asahi.com1に一部掲載↓
http://www.asahi.com/shopping/tabibito/TKY200910150301.html
<追記ここまで>



喫煙情報など


たくさんの喫煙シーンがあります。
誰かれとなく煙草をせびる「男1」のずるさがより印象付けられます。
臭いのないタイプが使われていますが、呼吸器が弱い私は煙でのどが痛くなってしまいました。

また、2~3分間くらいの(←私の感覚です。実際はもっと短いのかもしれません。)長い暗転があります。
声だけでひとつのシーンが表現されます。
完全な暗闇ではなく、蛍光の小さな点が無数に舞台空間に光っているのですが、煙草とともに「長い暗転」も苦手な私はそれでも恐怖感がせりあがってきてしまいました。
小劇場演劇を観始めてまもないころ、ある劇場で(ズズナリではありません)「暗闇のなかでのラブシーン」という演出が5分間くらい続いたことがあり、突然強い恐怖感が襲ってきて呼吸が苦しくなり、パニックに陥ってしまいました。
それ以来、長めの暗転になるとそのときの状態がぶりかえしそうで怖くなってしまうのです。
もう演劇に行くのはやめようかともおもいました。
なるべく身体をしめつけない服装にすること、パニックがきそうになったら深呼吸をしてほかのことを考えること、などでだいぶ慣れてきたのですが、今回ほど長い暗転は久しぶりでしたのでかなり危なかったです。
このような心配を抱えているのは私だけかもしれませんし、指定席なので出入り口近くの席を選ぶことなどもできないのですけれど。

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