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舞台『SOLITUDE』

キッタハッタの激動なおとこ芝居が大好きないっぽうで、日常生活のなかの感情の揺れを細やかな演出の積み重ねで表現するSPIRAL MOONの静かな世界にも強く心惹かれます。
主宰で演出の秋葉舞滝子(あきばまさこ)氏の美意識が美術・照明・音楽から小道具、舞台まわりのすみずみにまで浸透した工芸的世界も楽しみです。
外部の異なる作家による書き下ろし戯曲が、この秋葉ワールドに毎回どう染め上げられるのかが最大のみどころです。
今回も丁寧な作風とサスペンスなドラマ性の共存が斬新でした。

建築アートのようで毎回注目の美術は、今回も劇場に入った瞬間に魅了されました。
小さな「劇」小劇場をこれほど重層的な空間に作り上げる手腕はSPIRALの真骨頂です(美術:田中新一、木家下一裕)。
前回公演『日射し』とその前の『夜のジオラマ』で構築された「田中システム」――俳優の出入り口が舞台の片側にしかない劇場構造を克服する画期的手法――を産んだセンスは、3つの異なる時空間をこのせまい舞台に同時に現出させしかもそれぞれの世界が映画のようにスムーズにつながるというマジックをみせてくれました。
心が通うあたたかい世界とそうでない世界を対比し、時の流れを語る効果的な照明も絵画のようにきれいでした(照明:南手良治)
悲惨な事件を扱ってもきわどくならず、全体の静けさが保たれているところは秋葉演出ならではです。
時間も空間も離れたふたりの人間が結びつく瞬間のシーンが白眉でした。

劇団め組の野村貴浩さんが客演した『サクラソウ』(2006年12月/ザムザ阿佐ヶ谷)を観てSPIRALファンになって以来毎公演観るようになりましたが、今回は野村さんの登場場面が多かったのが嬉しかったです(『夜のジオラマ』は印象は強いものの少しだけでしたので……)。
野村さん演じる三島裕彦の性格が投影されたような優しい雰囲気の衣裳のセンスが素敵でした。
色彩は地味ですがスカーフやジャケットの素材感が柔らかく手触りがよさそうで、ジーンズにも小さなプリント柄?が散っていて硬さが緩和されています。
最上桂子さん演じる薄幸の女性・児玉野江を受け入れたいという三島のほのかな想いが現れているようでした。
め組のウェブサイトやファンクラブ会報などでたまにみかける私服姿の野村さんはとてもお洒落ですし、『夜のジオラマ』DVD収録のオーディオコメンタリーで自身が演じた秘密組織の副頭領・石田の衣裳は「自前」と話していましたので、今回の一連の三島の衣裳ももしかしたら野村さんの自前なのかもしれない、とおもいました。
私が観劇した2ステージとも、カーテンコールが最上さんの野江と秋葉氏演じる児玉美香のふたりだけで、野村さんはじめほかのキャストの姿がみられなかったのは残念でした。



SPIRAL MOON
『SOLITUDE』
2008年11月29日土曜日~12月7日日曜日(全12ステージ)
下北沢「劇」小劇場

作:乾 緑郎
演出:秋葉舞滝子

全席指定
前売 一般3,500円
当日 一般3,800円

べきら観劇日:
2008年11月29日土曜日14:00~(初日)
2008年12月4木曜日14:00~(映像撮影用カメラが入りました)

上演時間:1時間30分(休憩なし)

【物販】
・日本劇作家協会編『優秀新人戯曲集 2009』(2008年12月/ブロンズ新社)1,680円
※第14回劇作家協会新人戯曲賞に全国から応募した188作品のうち、最終候補として選ばれた5作品を収録したもの。
『SOLITUDE』は1番目に収録されています(P3)
表紙の巻貝と天体のイメージがSPIRAL MOONの劇団名の由来そのもので驚きました(参照:SPIRAL公式サイト→団体概要→What is SPIRAL MOON)。
・舞台録画DVD(予約)3,000円(別途送料600円がかかります)
※オーディオコメンタリー付き/2009年5月配送予定
・過去公演台本@1,000円
・過去公演DVD@3,000円(セットものは割引あり)
・特製Tシャツ(長袖、半袖)2,000円
※スタッフが着用しています。
サイズはSML、色はたくさんありますが多品種少量生産なのではやいもの勝ち状態です。
公演内容のイメージに合わせて毎回異なるデザインになっていて、今回はポップな抽象柄プリントですが、遠目でみるとキラキラ感があって(ラメなど入っていないのに)洒落ています。
実際に着てみると素材はみた目よりも薄手で軽く、それでいて目がつんでいるので着やすいです。

【当日パンフレット】
A5/4P
・キャスト表
・スタッフ表
・協力先一覧
・次回公演
・キャストの今後の活動
・SPIRAL MOONのウェブ情報案内



ネタバレありレポ


『サクラソウ』のテーブル、『おんわたし』の箪笥、『夜のジオラマ』の揺り椅子と毎回舞台のポイントとなる家具ですが、今回登場した土台のデザインが「掌が玉をつかんでいる?」(←ひとつが欠けているのがまたニクいです)レトロな浴室用品も素敵でした。
踏むとちゃんとカサコソ音がするけれど完全にばらばらにはならない落ち葉の多様な色とかたち、椅子にかけられたモラのバッグ、舞台以外でもトイレの手作り感あふれる飾りつけやお香の使用など、満載のアート感覚を味わう楽しみは尽きません。
名物の「消えもの」(劇中で使われるほんものの飲食物)も健在でした。
噛む音や皮をむく音も効果的に活かされています。
猟奇性と哀感が印象的だった松永英雄役・牧野達哉さんの歯が心配になってしまいました(笑)
美香の彼氏・青野くんのライフワークはどうやら4人の日替わりキャストごとに変えているようです。
私はふたり分しかきけませんでしたが、いずれも娘を持つ母親としては不安を覚えざるを得ない職業分野だったのが笑えました。

と、これほどさまざまな楽しさに浸りながらも観劇後のいつもの安らかな気持ちが訪れないのは、基本的なところで洗い流されきれずに残ってしまったものが私のなかにあるようなのです。
素晴らしく巧みな物語ではあるのですが、英雄の苦しみ(精神の病気)が素材として投げ出されていること、英雄に対する野江の行為(英雄→野江の行為のひどさはあるにしても)とラストの穏やかさのつりあいにどうにもひっかかるものをかんじてしまうのです。
もっとも、これは私が戯曲に書かれた英雄の無残な状態を読んでしまったせいもあるかもしれないのですが(舞台ではきれいにカムフラージュされたシーンになっていました)。
カーテンコールを野江と美香のふたりだけにした秋葉演出の意図がこのことと関連しているのかどうか、半年後に届く予定のDVDに収録されるオーディオコメンタリーを期待して待ちたいとおもいます。

コメント

こんばんは!私未だに余韻に浸ってます…
べきらさんのおっしゃるように空間のマジックというかあの狭い
舞台がとても広く感じました。
め組の菊川さんのブログにも書き込んだのですが、土曜日菊川さんや高橋さんたちが
私たちのすぐ後ろに座っていて握手して欲しかったんですよ~。

ああいう時なかなか勇気出ないんですよね。

>フェイフェイさん
め組とは異なる魅力の、素敵な舞台でしたね。
菊川浩二さんのブログ、読みました。
フェイフェイさんのコメントへの菊川さんのお返事がとても優しくて、読んでいて私まで嬉しくなりました。
同じくめ組サイト内の藤原習作さんのブログも更新されましたね。
いよいよ『in fantasioso』の稽古が始まるとのこと、来月の公演が楽しみです。
藤原さんと共演するStudio Life・関戸博一さんが出演中の『死の泉/パサジェルカ』を観るために、最近の私は銀河劇場に通っています。
関戸さんは、『死の泉』の少年役もかわいいですが、『パサジェルカ』の女性役がとても綺麗です。
とくに、Lifeファンのあいだで有名な「美脚」には毎回みとれてしまいます。
『カリフォルニア物語』での藤原さんのすらりとした足も、今でも忘れられません。
ふたりの美脚競演は……たぶん無理ですよね(笑)
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