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舞台『三人姉妹』

東京の北の端にぽつんとある小さな劇場で、若い劇団主宰が若い仲間とともに、あたたかみのある演劇空間をこつこつと手づくりで創り上げようとしている、時間堂(公式サイト)の公演です。

私が時間堂公演を観るのは、14回公演「俺の屍を越えていけ」(2006年12月/王子小劇場)、15回公演「ピンポン、のような」(2007年4月/王子小劇場)に続いて今回が3本目です。

「深呼吸のできる演劇」「リラックス」という言葉が公式サイトや堂主(=主宰)・黒澤世莉氏の発言にたびたび登場するように、ただ劇を上演してみせるだけではなく、その日その時に劇場という空間にたまたま共存することになった観客、俳優、スタッフ、セット、照明、音響、衣装、もろもろすべてが一体となった結果生み出される雰囲気や空気感といったものをすべて含めて作品として提供しようとしているのではないかと感じます。

観客もまた作品の一部になる感じがとても面白いです。



『三人姉妹』はたまたま昨2007年夏にTPT版公演情報を2回観てストーリーと人名がだいたい頭に入っていたので、時間堂版の特色を味わう余裕が持てたのは幸いでした。

声を張り上げて朗々と、というのではなく、いい意味で力を抜いた感じの、親近感の持てるソフトな雰囲気のチェーホフ劇になっていたのが新鮮でした。

ハンドメイド感覚あふれる最低限の小道具をいろいろなものに見立てて観客の想像力を喚起させる手法は能のシンプルさを連想させました。

和テイストがところどころに取り入れられた衣装もキュートでした(マーシャの黒いドレスの刺繍が素敵)。

三人の姉妹が身体の別々の場所に「あるもの」を装着しているのが象徴的でした。

私が観た回は役の人物と俳優さんのあいだにまだ距離がある感じでしたが、回を重ねていけばよりなじんでいくのだろうとおもいました。



公式サイト内の時間堂2007計画ブログが充実していて、単なる稽古場日誌ではなく、徐々に作品が形を成していく過程がリアルタイムでレポされていくさまはメイキングストーリーとしてそれだけで興味深いドキュメンタリーを読むようです。

とくに、公演が始まってからもその日の劇場記録やアンケート紹介、感想ウェブサイトのリンクをマメに更新し続けるそのエネルギーには眼を瞠ります。

初日が開けると更新が止まってしまう劇団ブログが多いのはやむをえないとはおもいますが、観客としては自分がこれから観に行く、あるいは観終わった公演の雰囲気や評判などを当事者発の言葉として読めるのは嬉しいことです。

単発の芝居を1本観てそれで終わり、というよりは、時間堂というプロジェクトの成長発展過程を見守るのがこの劇団の最大の楽しみ方なのではないかとおもいます。

心なごむ笑顔が素敵な制作者・田中沙織さん(田中さんのブログ)の前説がなかったのは残念でした。
(私が観た回の前説は黒澤氏でした。飲食自由ですのでなるべくくつろいで観てください、という優しさが安心でした。観客の誘導や補助椅子出しまでするマメな堂主様です。なお、田中さんはキリンバズウカ『飛ぶ痛み』/2008年4月/王子小劇場/公演情報に俳優として出演されます。←チケット予約しました。)



時間堂
cinema price theater project
『三人姉妹』
2008年3月13日木曜日~23日日曜日(全12ステージ)
王子小劇場

脚本:アントン・チェーホフ
翻訳:神西 清
演出:黒澤世莉

※14人の登場人物のうち、4役はダブルキャストです。
(アンドレイ、フェラポント、ナターシャ、アンフィーサ)
詳細は公式サイト内の公演情報にあります。

全席自由
前売り・当日2,500円
13日~16日の4ステージはシネマプライスシアター1,800円
学生・北区在住者・シニア(60歳以上)は1,800円 *当日券のみ、要証明

べきら観劇日:
2008年3月15日土曜日昼の部

上演時間:約3時間(15分間の休憩1回を含む)

【物販】
三人姉妹すごろく(価格失念)
過去公演台本、DVDなど
プログラム販売なし

【当日パンフレット】
B6/4P
出演者表
ごあいさつ
(↑「好きなひとにくらべたら演劇なんて……」という書き出しが黒澤氏らしい力の抜け方です。)
スタッフ表
謝辞(協力団体一覧)
演出家より出演者紹介
(↑全14名のキャストひとりひとりについて黒澤氏が200字くらいの紹介文を書いています)

【配布物「“三人姉妹”よくわかる紙」】
A4ペラ(裏白)
黒澤氏手書きによる人物相関図と超簡略化されたあらすじ説明。
簡潔で核心をついていて、難解におもわれがちな古典を要するにそういうことなのよね、と解体した愉快な一葉。

<追記>2008-05-01
劇評サイトwonderlandに掲載された、鈴木励滋(すずき・れいじ)氏による特別寄稿↓
http://www.wonderlands.jp/index.php?itemid=831



客席状況とPPT(ポストパフォーマンストーク)レポ
ネタバレあり


アイランド状態に孤立した長方形の舞台を、片側2列ずつの客席が左右から挟むかたちです。
上手も下手もありませんが、入り口の扉を背にして右の壁際と左の壁際に2列ずつのパイプ椅子が並べられていました。
舞台を挟んで反対側のお客さんとお見合い状態になります。
3席ずつおきくらいに空きスペースがありますが、満席になるとそこにも補助椅子が嵌め込まれます。
キャットウォークから舞台を見下ろすギャラリー席も希望すれば案内してくれます(桟敷ですが)。
俳優さんは基本的に(入り口の扉を背にして)左奥から出入りします。
舞台の上だけでなく周囲の通路(前列の観客の直前)もぐるぐる歩き回ります。
「楽隊」もこの左奥で演奏するので、左側の後列に座った私にはまったく見えませんでした。
もっとも、開演後に入り口そば(右側寄り)に座って舞台を見守る黒澤氏の演出家としての表情が視界に入る点では左側が良席でした(笑)
ソリョーヌイ役玉置玲央さんが煙草を吸いながら舞台の周囲を歩き回るので(←喫煙は原作通り)、煙が場内に充満するのがつらかったです。

PPT(ポストパフォーマンストーク)レポ:
終演後5分くらいの休憩をはさんで30分間くらい行われました。
3分の2くらいの人が残ったとおもいます。

透明プラスチックのカップに入った水を手に、黒澤氏、星野奈穂子さん(この回はアンフィーサ)、堀 奈津美さん(この回はナターシャ)、松葉祥子さん(ローデ)、雨森スウさん(オーリガ)、瀬尾卓也さん(フェドーチク)、それに司会役として演出助手の○○○○氏(←名前が聞き取れませんでした/スタッフ表から判断するに佐伯風土氏かと)の7名が舞台に上がります。
俳優さん達は私服に着替えていてタイツやソックスの人もいましたが、黒澤氏は裸足になっていました。
最初は7人が舞台中央に集まってスツールのような小道具に座ったのですが、客席にお尻を向けてしまうのに遠慮して移動、結局奥側の壁を背に黒澤氏、星野さん、堀さん、松葉さんの4人、入り口側の壁を背にして雨森さん、瀬尾さん、司会男性の3人に別れました。
舞台中央にはイリーナのリボンが残されたままになっていました。
撮影している人がいたので、たぶん公式サイト内に動画がupされるだろうとおもいます。

記憶の断片↓
・ダブルキャストについて
星野さん「パクれるな、と」
堀さん「ひきずられちゃうことがある」

・どちらのナターシャがいいか、という司会氏の質問に
黒澤氏「そんなこと言えるわけないだろう」

・劇全体について
黒澤氏「僕が面白いとおもっているものが、今の段階ではまだお客さんに充分伝わっていないな、と」

・演じ終わってどうでしたか?と質問を振られて
瀬尾さん「すみません、ほかのこと考えてました」
黒澤氏「その“ほかのこと”を教えてください」
瀬尾さん「水が足りないな、と」
客席でトークを聞いていた玉置さんがすかさず奥へ引っ込んだかとおもうとすばやく2リットル入りくらいの大型ペットボトルを持ってきて、瀬尾さんの空のカップに舞台下から水を注いであげました。
このあとも黒澤氏やほかの俳優さんのカップにマメに水を注いでまわる「可愛いひと」(←当日パンフレットの「演出家による出演者紹介」より)な玉置さんでした。

・時間堂のワークショップオーディションに応募した動機について
瀬尾さん「僕の場合、フジ○ラタ○ヤがライバルでして、向こうがシェイクスピアならこちらはチェーホフでちょうどいいかな、と」
笑っていいのかどうか、瀬尾さんの表情がクールなので一瞬躊躇しましたが、黒澤氏が爆笑してくれたので安心して笑うことができました。

・劇中曲の曲作りについて
雨森さん「私は楽譜書けないしピアノ弾けないんですけど、このふたりが(星野さん、堀さん)がピアノができるので、私の家で6時間くらいかけて作りました、楽しかったです」
メインの曲『モスクワ』はとてもいい曲でした。
別の曲を3人でちょっとだけ歌ってくれたのが嬉しかったです。

・翻訳戯曲独特のなじみにくい(「~ですわよ」など)言葉遣いで上演する苦労について
(フランス文学の翻訳をなさっているという男性客からの質問)
黒澤氏「神西先生の訳をそのまま上演しました。翻案すれば上演時間を短くできたとおもいます。長々と話して結局何が言いたいかといえば“あなたが好き”ということだったりしますからね。でも敢えてそのままにしました。言葉使いの苦労はなかったとおもいます。」
なぜ翻訳文に忠実に上演したかについて黒澤氏はもっとなにか述べていたとおもうのですが、記憶が抜けてしまいました。
動画upに期待します。
雨森さん「演じる側としても、言葉遣いで苦労することはありませんでした」

・あともう1回観るがみどころは?という観客の質問に
松葉さん「ナターシャとクルイギンの空気読めなさってすごいんですよね。あと、文化の面とか…高価なサモワールってなんだろうって皆で話したんですけど、純金のベンツみたいなものじゃないかって…要するに使えないってことなんです。最初に(戯曲を)読んだとき“何が面白いんだろう”っておもったんですけど、そういう見方をすると面白いとおもいます。」

コメント

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>2008.03.21 11:47鍵コメントの方へ
書き込みをいただき、とても嬉しいです。
ありがとうございました。
ご丁寧であたたかい内容に感動しています。
時間堂を含めて、いろいろな演劇に触れていきたいとおもっています。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。


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