スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

舞台『欲望という名の電車』

現代演劇の女形として独自の存在感を持つ篠井英介さんと北村有起哉さん公式サイトの組み合わせを楽しみに待ち続けた舞台です。
しかも演目は『欲望という名の電車』――有起哉さんの亡き父上である北村和夫さんが文学座で故・杉村春子さんと演じ続けた名作で、歌舞伎のように親子2代が同じスタンリー役を演じるのが話題になりました。
篠井さんがヒロイン・ブランチ役を演じるのは今回で3演目だそうで、プログラム掲載のコメントからはこの役への強い想い入れが伝わってきます。
ただ、今回で篠井さんはブランチを封印するとのことですので、北村さんの親子2代のスタンリーとともに記念すべき作品となりました。

家の没落、恋愛の崩壊という不幸とひとり戦って敗れ、孤独のなかで狂気にいたるブランチという哀しい女性が篠井さんの様式的な演技のなかに生きていました。
「そうではないものがそれを演じるのを観る」ことの醍醐味は、演じ手の努力と英知を受けとめると同時に、観る自分の想像力を確かめることにあるとおもいます。
篠井さんは自身の言葉にあるように若くはなく、身体つきもたおやかというよりはがっしりと見えます。
死神を連想させる「見知らぬ男」の、クールなフランス語の独白で始まる幕明け、続いて客席から登場するブランチ――私は神経を集中して受け入れ体制に入ります。
線の細い有起哉さんと並ぶと、篠井さんのほうが強そうに見えるような……しかし、やがて上流階級出身らしいおっとりした身のこなし(とくに指の動きが表情豊かで綺麗…)、お嬢様育ちに由来する天然なユーモラスさによって「おじさん」(←篠井さん弁)の姿の向こうに私だけのブランチが見えてきました。
有起哉さんを始めとする若手俳優さん達のナチュラルな演技と篠井さんの様式的演技との異質さがブランチの孤立と淋しさを際立たせていました。
有起哉さんは声の強さ、瞬間湯沸かし器的暴力性、思い切りのいい「下品さ」で篠井さんブランチの迫力に伍していました。

篠井さんのブランチは今公演で最後になってしまいますが、演出・鈴木勝秀氏とともに今回を第1作として今後3年間、東京グローブ座で毎年1本ずつ芝居を上演することが決定したそうです(プログラムより)。
篠井さんと鈴木氏は昨2006年の『トーチソング・トリロジー』公式サイトでも組んでいますので、コンビとしては4年連続ということになります(長谷川博己さん演じる年下の恋人・アランに甘える篠井さんのアーノルドが可愛かったです)。
劇場でもらった仮チラシによれば第2作は三島由紀夫作『サド侯爵夫人』、2008年10月東京グローブ座にて上演予定です。
篠井さん以外のキャストは掲載されていませんが、「全男性キャスト」とのことです。
2008年の楽しみがまたひとつ増えました。



アトリエ・ダンカン/シーエイティプロデュース
『欲望という名の電車』
2007年11月16日金曜日~25日日曜日(全14ステージ)
東京グローブ座公式サイト

作:テネシー・ウィリアムズ
翻訳:小田島恒志
演出:鈴木勝秀

全席指定
S席7,800円
A席(3階)4,800円

べきら観劇日:
2007年11月21日水曜日夜の部

上演時間:2時間45分(15分間の休憩1回を含む)

【物販】
プログラム1,200円
篠井さんサイン入りポスター(数量限定)1,000円
(プログラムとポスターのセット2,000円)
※対談「篠井英介×鈴木勝秀×小田島恒志 演劇を巡るすべての人々の想像力を信じて」が読み応えある内容です。
『欲望~』はこれまで小田島氏の父・小田島雄志氏による翻訳(新潮文庫に収録)で数多く上演されてきましたので、ここにもうひと組の父子2代ストーリーがありました(息子・恒志氏による『欲望~』訳初演は2002年5月シアターコクーンにて、蜷川幸雄演出、大竹しのぶさんと堤 真一さんの組み合わせでした/べきらは未見/公演情報)。
有起哉さんが出演した『クリーンスキンズ/きれいな肌』公演情報アフタートークで翻訳にまつわる恒志氏のお話を伺う機会があったのですが、絶妙のトークで大いに楽しませていただきました。
原語の微妙な味わいについて、今回の対談でも興味深い内容が披瀝されています。



・『欲望という名の電車』公式サイト:
http://www.duncan.co.jp/web/stage/desire/index.html

・公開舞台稽古(シアターガイド サイトより):
http://www.theaterguide.co.jp/pressnews/2007/11/16.html

・ぴあインタビュー(演出・鈴木氏×篠井さん):
http://info.pia.co.jp/et/play-p/yoku_densha/yoku_densha.html

・雑誌『シアターガイド』2007年12月号P24
“名作”をふたたび。自らの歴史を乗り越える挑戦
「欲望という名の電車」
篠井英介&北村有起哉/鈴木勝秀

・雑誌『LOOK at STAR!』2007年12月号P67
北村有起哉with阿佐ヶ谷
「欲望という名の電車」

・雑誌『Top Stage』2007年12月号P72
北村有起哉 因縁ある名作に挑む!
「欲望という名の電車」



↓ネタバレありレポ
粗野で下品なスタンリーですが、小島 聖さん演じる愛妻・ステラを(妊娠中なのに)殴ってしまい、泣きながら後悔する2階のシーンが乱暴さの裏にある幼児性を感じさせてよかったです。
手すりをまさぐって支えにしようとするスタンリーの手と腕の動きのおぼつかなさに懸命さが表れていて、殴られても彼を愛し続けるステラの気持ちがわかるような気がしました。
ただ、↑この懺悔シーンを含めて有起哉さんの見せ場が下手に集中しているような気がして、たまたま上手の端のほうの席だった北村有起哉ファンの私は拗ねて(笑)しまいました。
玄関ドアも2階への階段も下手にあるので仕方ないのですが、何度も客席通路を通るスタンリーが(冒頭の1回を除いて)すべて下手側出入り口を使うのが残念で淋しかったです。
もっともその反面、上手の端に作られたブランチのベッドまわりのシーンは目の前で味わうことが出来ました。
スタンリーとは対照的に礼儀正しくて教養もあるミッチ――阿佐ヶ谷スパイダースの伊達 暁さん、『イヌの日』eプラス公演情報ではそれこそスタンリー的コワさでしたが、今回は愛を求める優しい青年でした――が、ベッドに座るブランチと詩について会話するシーンが素敵でした。
スタンリーがブランチを蹂躙するクライマックスも、スタンリーの獣性とベッドに崩れ落ちるブランチのあわれさの鮮やかな対比が迫力の伝わり方でした。

ブランチが次々に着こなす、黒に統一されたドレスやガウンがとても素敵で優雅なセンスにあふれていました。
透ける素材やレースをふんだんに使いながら品があり、彼女が富裕な上流家庭に育ったことを感じさせます。
とくに、たっぷりとした長さの毛皮のストールを肩に乗せたときのロングドレス姿は迫力ある豪華さでした。
プログラムの衣裳協力のなかに「TPT」とあるのはシアタープロジェクト・東京公式サイトのことでしょうか……どことなくTPT『黒蜥蜴』公演情報で麻実れいさんが演じた緑川夫人こと怪盗・黒蜥蜴のイメージに通じるものが感じられました(衣裳は両公演とも原まさみ氏、両公演のプログラムを確認しましたところ、『欲望~』衣裳製作スタッフの3氏は『黒蜥蜴』の衣裳製作欄にも名前がありました)。

カーテンコールは2回でした。
篠井さんを中心に横一列に並んだキャストが拍手を受けます。
舞台中央のバスルームに通じるドアからひとりずつ退場していき、最後のふたりになったとき、劇中では対立していたスンタリー・有起哉さんがブランチ・篠井さんの腰に優しく手を回してリードしていたのを見てほっとした気持ちになりました。
2回目は篠井さんが最下手に立ち、観客とともにキャストに拍手を贈るかたちでした。
今公演は篠井さんの企画(演出の鈴木氏も)になっていることを反映してのこのかたちなのかしらとおもいました。
退場しようとする有起哉さん、小島さん、伊達さんを篠井さんが引きとめ、4人で手をつないでもう一度拍手に応えます。
最後は白いドレスのブランチがひとり、片足を後ろに引く優雅なお辞儀を披露して締めくくりとなりました。



フジテレテレビ系ドラマ『SP』番組公式サイトにテロリスト役でゲスト出演した有起哉さん、スタンリーとはがらりと異なるクールな雰囲気が素敵でした。
本人のブログこちらに舞台とテレビの演技の違いについての記事(11月10日up)があります。
11月24日土曜日放送の第4話にも登場するようなので楽しみです。

コメント

非公開コメント

プロフィール

べきら

Author:べきら
観劇の記録です。

Twitter

月別アーカイブ

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。