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舞台『開放弦』レポ

映画祭で「通」の評価を集める、丁寧に撮られた8ミリフィルムの映画のような舞台でした。

笑いもふんだんにあるのだけれど、全体に静かで、淡々として、登場人物それぞれが自分の気持ちをストレートに表せない「居心地悪さ」を抱えていて、でもそれがいとおしく感じられるという内容です。

会話のなかの「間(ま)」がとてもいいです。

滑舌(かつぜつ)を競い合うような、矢継ぎ早にまくしたてるお芝居が多いなか、ぜいたくにふんだんに取り入れられた「間」が季節、空気、気持ちのすれちがい、心の奥に秘めているものをくっきりと浮かび上がらせ、この舞台を「映像的」に見せていたとおもいます。

聞こえるか聞こえないか、くらいにささやかに鳴る風鈴、遠くを走り去る車の音、ひぐらしの声……押さえた効果音が、どこともしれないふつうの日本の田舎の夏を作り出していて、その控えめさが心地よく、哀しげなギターサウンドをいっそう引き立てていました。

劇場を出ると、渋谷の街にはここ数日の蒸し暑さを癒してくれるような静かな雨が落ちています。

電車に乗って、降りた次の目的地の駅も雨でした。

いつもなら迷わずタクシーを使うのですが、この日は20分の距離を歩いてしまいました。

雨のなかを歩きたくなる気持ちにさせる、そんな静かでせつない、いい舞台でした。



パルコ+リコモーション プレゼンツ
『開放弦』(かいほうげん)
2006年7月17日日曜日
昼の部
L列下手ブロック
パルコ劇場

2時間35分:
一幕 85分
休憩 15分
二幕 55分
べきらが観劇した回は約10分押し(遅れ)でスタートし、2回のカーテンコールを経て終了したのが16時50分頃でした。


↓これより本格的ネタバレ


先月2006年6月は、血みどろヴァイオレンスなブラックコメディー『ウィー・トーマス』と、ピュアで詩的な少年達の愛の物語『トーマの心臓』(共に傑作!)という両極端な舞台作品に心が翻弄されたので、今度はまったく違う系統の、さりげなく静かなおとなのお話を観たいな、とおもいました。

劇場でもらったり、送られてきたりする山のように大量のチラシをさがしていたら、『開放弦』という、シンプルでいいかんじのタイトルに目がとまりました(これがある種のギター奏法を意味する音楽用語だということは、あとで知ることになります)。

開 放 弦

この三文字のバランスと安定感が目に心地よく、また「かいほうげん」という音の響きもよかったので、この芝居に決めました。

あと、俳優さん達が(べきらには)なじみのない顔ぶれだったのも、先入観なく観られそうでいいな、とおもいました(実際には、演劇界、テレビ界で名の通った方々ばかりなのですが、べきらは知識が乏しいので)。

ところが、いちおう事前の下調べをしようとウェブサイトを巡回していて、演出G2さんと二枚目「遠山」(とおやま)役の男優さんの動画インタビューを視聴していたところ、ファッションモデル出身という、さすが服の着こなしが抜群のこの男優さんの声に聞き覚えがあるような気がしてきました……

ややハスキーななかに甘さの含まれた、耳たぶを甘噛みされるように心地よいこの声は……

俺が保障してやるよ――

お前が最高のバイオロイドだってな――


そう、舞台『OZ』(オズ)のネイト少尉ではありませんか!

先月『トーマの心臓』で劇団スタジオライフのファンになったべきらは、劇団の過去の舞台DVDを手に入るかぎり集めたのですが、樹なつみ氏原作の大ヒット漫画を舞台化したこの『OZ』(オズ)はなかでも抜群の面白さで、すでに10回以上繰り返して再生して観ています。

主人公の傭兵・ムトーの腹心の部下にして百戦錬磨の冷徹な軍人・ネイトを演じたのが、このファッショナブルな遠山役・丸山智己(まるやま・ともみ)さんだったのです。

・丸山智己さん情報:
http://www.cubeinc.co.jp/members/prf/094.html
※キューブ サイトより

http://www.reboundglamour.com/profile/maruyama.html
※REBOUND GLAMOUR サイトより

http://www.gigmanagement.jp/male/tomomi.html
※GIG MANAGEMENT JAPANサイト より

剃りこみ入りの坊主頭にサングラス、迷彩色の軍服を着た姿は立っているだけで威圧感と攻撃性を放射していて、スタジオライフにはこんなコワい役者さんもいたのかしら……と驚きましたが、キャスト一覧を読むとどうやら客演の人らしい……このとき丸山さんの名前をたしかに目にしたはずですが、記憶力の弱いべきらはいったんスルーしてしまいます。

第一印象のコワモテぶりがあまりに強烈でしたが、何回もDVDを再生しているうちに、ネイト少尉の優しさ、美しいバイオロイド(人造人間)・1024=テン・トウェンティーフォーを愛してしまった苦悩がひしひしと伝わってきて、どうにも「気になる俳優さん」になってきていました。

今ではすっかり髪ものび(笑)、さりげないカジュアルをセンスよく着こなす丸山さんの存在に気づいたことで、舞台『開放弦』への興味が俄然高まりました。

農業をしながら高校時代の仲間とバンドを組んで、ギタリストとして作曲もする心優しい青年「遠山」を演じる丸山さんは、ベテラン役者陣に囲まれるなか、新鮮で誠実な演技を見せ、真夏の涼風のように爽やかな存在でした。

なによりその姿のきれいさに、「先入観なく芝居を味わいたい」などという気持ちはしばしば途切れ、ついつい遠山クンに釘付けになってしまったほどです。

登場シーンの燕尾服(結婚式を終えて帰宅した新郎)以外は、ふつうの田舎の青年の日常着なのですが、何を着ても、立っても座ってもとにかくかっこいい!

とくに「風呂上がりの浴衣」姿には……そそられました♪

紺地の浴衣に真っ白なタオルを首にかけ、開け放した座敷に胡坐をかいて座った姿の絵になることといったら……

キュートな子鹿のような京野ことみさんが、浴衣の裾からふくらはぎがちらりと覗いた彼の膝に手をかけ、はだけた衿の内側の、風呂上がりで上気した胸元を覗き込むように彼の肩にあごを乗せるシーンは、観ているこちらの心拍数が一挙にはねあがりました。

そしてきわめつけは、水野美紀さん演じる恵子と遠山の夫婦が、ふたりで一台のギターを弾くところでした。

交通事故で右手が不自由になっても、なお作曲への夢を捨てがたい遠山の希望で、彼に教わりながらおそるおそるピックを持つ恵子……遠山が左手で弦を押さえ、恵子が右手で弾く……そう、その調子だよ……単なる音が、徐々に音楽になっていく……金銭のための偽装結婚をしたふたりの気持ちが、ひとつに寄り添っていく、しみじみとせつない、いい場面でした。

そしてラストシーンの、ひとりになってしまった恵子の「開放弦」の音色には、涙がじわりと滲み出てしまいました。

遠山の葬儀に集まった客達の前で淡々とふるまい、泣くことをしない恵子が繰り返し奏でる単調な音が、どんな嗚咽よりも哀しい響きで、観る者の心に沁みとおりました。

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