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舞台『おるがん選集 秋編』

風のない、日射しのあたたかな初冬の東京の住宅街で、ひそやかで不思議な演劇体験をしてきました。
私がこれまで観た風琴工房公演は水俣病、ロシア・アヴァンギャルド建築、大正時代の新聞報道がテーマでしたが、今回は男女の愛の物語の2本立て上演です。
俳優が選んだ文学作品を座付き作家・演出家の詩森ろば氏が戯曲化して上演するという新たな切り口が新鮮でした。
昭和の東京に生まれ育った者の郷愁を狂おしく刺激する一軒家のギャラリーに、若い俳優が「その場に生きて」世界をつくりあげていました。
公演は終了しています。

劇場は一軒家のなかの一室です。
広さは8畳前後と目算しました。
各回限定20名の観客席(最前列が座布団席、2列目がスツール、3列目が背もたれのある椅子席)が上演のおこなわれる部屋のスペースの半分を占め、残りの半分で芝居がおこなわれます。
壁と天井はきれいに内装し直されていて、その天井が高いために意外に圧迫感はありません。
床はコルク片を圧縮成型したような板張りでした。
靴は受付である前室の三和土(たたき)で脱いであがります。
脱いだ靴は前室内に広げられたシートのうえに観客が自分で並べていきます。
靴を持っていかなくていいのは助かりました。

前室の奥には小さな台所とトイレ(男女兼用)がみえます。
ここでたしかに人が暮らしていたのだ、という実感と重みがにわかにかんじられて、開演を待つあいだにはたして演劇という虚構がこの場所で成り立つのだろうかという懸念がもちあがってきました。
木製の窓枠、窓外の樹木、遠く近くきこえてくる街の気配……なにもかも素敵すぎるのです。
これだけ場そのものの魅力に捉えられてしまうと、気持ちが作品に入れるのだろうかという不安です。
客入れのあいだ、すでに松木美路子さん演じる「妻」がベッドで静かに目をとじて横たわり、かたわらのコンロにかけられた鍋が煮立っています。
最初の一瞬で決まるのだろうな、とおもいつつ開演となりました。
音響も照明もない、窓からの自然光だけの静かな幕開けです。
ドアを開けて入ってきた「夫」役浅倉洋介さんが病床の「妻」に投げかける第一声、「――のか。」
このひと声で、世界があちら側に切り替わりました。
演劇を観る者としての、至福の成功の瞬間です。
そこからさきは場と作品と俳優が一体となって生き始め、私という人間は消えました。

当日パンフレットによれば、次回作『おるがん選集 春編』は来2010年5月都内某所予定とのことです。
次回はどのような作品が、どうのような場所で上演されるのでしょう。
ふたたび日月もよし、新たな場所もよし、5月といえば花粉症も峠を越して梅雨に入る前のよい季節でもあり、と期待がふくらみます。
ちなみに、本日届いた演劇雑誌『シアターガイド』2010年1月号に掲載されているTPT門井 均氏インタビュー(P46~48『TPTが今、考えていること』)によれば、来2010年のTPTは上野の水上音楽堂でチェーホフ『かもめ』を上演するそうです。
インドア派の私としては、できれば野外はさけてほしいところです……でも、TPTも結局行くことになるのですけれど。



風琴工房
『おるがん選集 秋編』
2009年11月21日土曜日~29日日曜日(全15ステージ)
ギャラリー日月(ひつき)
※1回の上演で2本観劇できる2本立て公演です。
公演公式サイト
CoRich情報

『春は馬車に乗って』原作:横光利一(松木美路子 選)
『痩せた背中』原作:鷺沢 萌(小山待子 選)
脚色・演出:詩森ろば

全席指定
前売 2,700円
障碍 1,500円

べきら観劇日:
2009年11月26日木曜日14:00~

上演時間:1時間45分(10分間の休憩1回を含む)
※『春は~』35分、休憩をはさんで『痩せた~』60分でした。

【物販】
未確認

【おみやげ】
上演台本(A5/29P 2本分収載)
※ノンブルが漢数字なのが泣かせます。
終演後、詩森さん手ずから観客ひとりひとりに渡してくれました。

【当日パンフレット】
A5/4P 2色
『小説に似た。』詩森ろば



機械・春は馬車に乗って (新潮文庫)
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