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舞台『明けない夜』

狩野和馬さんとJACROW、という期待倍加の公演です。
狩野さんには、佐藤佐吉演劇祭2008の参加全8作品観劇制覇への挑戦中に『僕らの声の届かない場所』でその狂気性、孤立感、唯我独尊の色気に惚れこんでしまいました。
その後は『i/c(アイ・シー)』、『ゲニウスロキ』と追いかけ、フジテレビの昼ドラマ『エゴイスト』もみました。
JACROWは『紅き野良犬』(2008年10月/サンモールスタジオ)のチラシの雰囲気に惹かれて初めて劇団名を認識したのですがこのときはどうしても時間がとれずに断念、狩野さんが出演する今度こそは!と力を込めて日程確保しました。

神経がぎゅっと緊迫し、最初から最後まで集中が途切れることなく引き込まれました。
携帯電話やパソコンはもちろん、ウォークマンもまだ出回っていない昭和38年の東京都葛飾区で、工場を経営する裕福そうな社長一家に発生した誘拐事件をめぐる日没から夜明けまでの物語です。
社長夫婦、従業員、警察関係者というおとな12人の行動が淡々と積み上げられていくのを追ううちに少しずつ人物の関係図がみえてきます。
代理会話の道具が電話だけなので、登場人物の会話がリアルのやりとりのみで編み上げられていくのが快感でした(目の前で生身の人間と話しているのに、携帯に着信があるとなんのためらいもなく対話を遮断して通話を優先し、相手方もそれを当然のように容認するシーンには――演劇だけではなく映画やテレビでも今や「ふつうの光景」になっていますが――どうにもなじめない私です)。

ただし、説明されないことがたくさんあるので、想像力を総動員しなければわけがわからなくなってしまいます。
実は本編の結末が意味不明のまま観終わってしまった私なのですが(カーテンコールでの吉永雪乃ちゃんの笑顔になぐさめられました)、帰宅して台本を読み通し、外伝観劇までの3日間考えた事件のからくりが正解だったので安心しました。
12人による5分ずつのひとり芝居で構成される外伝では、各人の生活にふくらみが加わり、感情に豊かさと納得が与えられます。
善人か悪人かの2色に塗り分けるのではなく、いろいろなものをかかえている12人それぞれを突き放して描く視線の冷静さに心地よさをかんじました。

狩野さんは着火寸前のひりひりしたかんじが素敵でした。
今ではみかけなくなった洗いっぱなしハリセンボン風ヘアスタイルもあって、顔つきが「昭和の人」になっていたのが驚きです。
初めての劇団で自由席のときは喫煙シーンが怖いので後ろの席を選ぶのですが、舞台下の通路スペースで嗚咽する「がんじ」に、最前列にすればよかったと激しく後悔したのでした(喫煙シーンもありませんでした)。
蒻崎今日子さんの「奥さん」の強烈さに迫力がありました。
自分より弱い立場の同性を逃げ場なく追い詰めるキツさはいたたまれなくなりますが、この迷いのなさは視点をかえれば一途で純粋ともいえるわけで、若い頃は情熱的で(とくに男性にとっては)魅力的な女性だったのではないかとおもえます。




JACROW
#12
サンモールスタジオ提携公演
『明けない夜』
同時上演『外伝~それぞれの事情』
2009年7月17日金曜日~26日日曜日(本編13+外伝4=全17ステージ)
サンモールスタジオ
※外伝のみの観劇は不可。
CoRich情報


脚本・演出:中村暢明

全席自由
・前売
本編 3,000円
(四十割 2,700円/前半割 2,700円/平日昼間 2,700円)
・当日
本編 3,300円
(四十割 3,000円/前半割 3,000円/平日昼間 3,000円)
・外伝 1,500円
(前売・当日共に)
※ただし『外伝~それぞれの事情』のみのチケット販売はなし(本編の料金にプラスして一律1,500円で観劇)。
開場は開演の30分前、受付開始は開演の45分前。

べきら観劇日:
本編 2009年7月20日月曜日15:00~
外伝 2009年7月24日金曜日20:00~

上演時間:
本編 90分(休憩なし)
外伝 60分(休憩なし)
※劇団サイトとチラシに上演時間が告知されているのが親切です。
夜の部の20時開演とともに、時間に拘束される会社員の身にありがたかったです。
脚本・演出で劇団代表の中村暢明氏は、普段はキャンペーンプランナーとして広告代理店に勤務するサラリーマンでもあるとのこと(劇団サイト内PROFILEより)、40歳以上は前売・当日とも300円割引の「四十割」、急に時間が空いた人のための劇場ロビー直通電話対応などとともにさすがの配慮と発想だとおもいました。

【物販】
上演台本 500円
過去公演DVD 3,000円
過去公演台本 500円
※終演後にロビーで販売。
過去公演のDVDと台本は劇団サイト内のORDERからも注文できます。
狩野さんは『落花生』にも出演していたのですね……購入検討中。

【当日パンフレット】
B5/4P
・「登場人物~ご観劇の参考に~」
・「ごあいさつ」
・外伝告知
・スタッフ表
・協力先一覧
・次回公演
・「出演者の今後の活動予定」
※全13人の登場人物紹介が顔写真付きで表紙に印刷されているのが親切です。
「警視庁捜査一課」「亀有署刑事課」などのグループ分け、さらに「主任」「奥さん」「めがね」などのひとこと解説も理解を助けてくれます。
終演後にアンケートを書くときは、座席の膝の上でもロビーで立ったままでもとにかくきゅうくつな状態なので、表紙をめくらずに役名や俳優名を確認できるのが助かります。
顔写真の「粗さ」も雰囲気作りに貢献しています。
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