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舞台『かもめ』

この公演のために新たに翻訳された沼野充義訳が歯切れが良くてとてもわかりやすく、チョーホフ初心者にはありがたかったです(雑誌『すばる』2008年7月号に戯曲全文掲載)。
『すばる』に掲載された沼野氏による訳者解説にも、原文の精確な読み取りを大前提としたうえで、「短い言い方」を優先することで現代的な台本作りをこころがけたとあります。
翻訳劇のセリフにはどうしても違和感を感じてしまうことが多いですし、ましてチェーホフとなればさぞや難解なのではと覚悟していたのですが、予想していたよりも登場人物の気持ちを捉えることができたようにおもえました。
品物や状態を表す用語も大胆に「今」を取り入れていて、第3幕で主人公の青年トレープレフをなじる母アルカージナが神西 清訳(新潮文庫)では“居候!”というのを、“○○○○○!”とカタカナでいうところなど親に依存する若い男性の状態がストレートに伝わって、とっつきにくいチェーホフ劇もけっこう面白いのね、と感じました。
登場人物ひとりひとりが現代にも通じる悩みを抱えているなかで、たかお鷹さん演じる情けない教師のメドヴェジェンコが、皆に馬鹿にされながらも実は望むものをしっかり手に入れるている(片思いのマーシャと結婚することができ、子どもも産まれた)したたかな成功者のようにみえたりしたのも楽しかったです。
ただ、このわかりやすさがチェーホフに詳しい人々には不評だったようで、新聞掲載の劇評やベテランの演劇ウォッチャーによるいくつかのブログでもチェーホフ本来のよさが感じられないという趣旨の評がみられました。
繰り返し上演される古典作品は、観劇を重ねるほど理解が深まって観る側の目も厳しさを増すでしょうし、どなたにも「これが最高」という基準となる作品があることとおもいます。
今回の『かもめ』を演出した栗山民也氏が、上演時期が近接した『まほろば』(『かもめ』東京公演千秋楽の2日後に『まほろば』初日/栗山氏は『まほろば』も演出)の公演プログラムに寄稿したなかに、
<↓引用>
(『かもめ』を)書いた時のチェーホフは35歳で、だから稽古場ではいつも35歳である一人の劇作家の書いた新作と出合った時のような心持で、
<引用ここまで>
とあるのが印象的でした。
今回初めて生の舞台で観た名作『かもめ』はとても新鮮で、これから別の演出家や別の俳優による『かもめ』が上演されたらまた観に行きたいとおもいました。
2008年の栗山版『かもめ』が、私にとっての出発点となる『かもめ』です。

オープンして間もない赤坂ACTシアターはとても綺麗でした。
ロビーの狭さが残念でしたが(↓後述)、客席はとてもみやすかったです。
前から10番目くらいでも舞台がとても近く感じられ、前の列の人の頭のてっぺんが舞台の最前端のちょうど真下にくるので視界が遮られることもありませんでした(女性客ばかりだったのも幸いしました)。
そのわりに通路の傾斜も急ではなく、足元も安心でした。
下手の壁際近く(映像収録日だったのでほんとうの壁際席はカメラが設置されていました)とかなり端のほうだったわりには見切れもなく、抽象的で直線的なモチーフの舞台がよく見渡せたのは劇場構造と島 次郎氏の美術の両方のおかげだったのでしょう。
傾斜した青い額縁に縁取られた黒い絵画のような舞台の、端ぎりぎりに立った藤原竜也さんのトレープレフが、片足のつま先を少しだけ舞台端から客席空間に出した場面がほんとうに絵のようで強く印象に残っています。
無機的で感情のない直線の世界のなかで、トレープレフの命の一部分が破調的にこちらの世界を向いている――舞台世界と観客の生きる現実世界が結びついてひとつになったように感じました。



TBS/ホリプロ
赤坂ACTシアター オープニングシリーズ
『かもめ』
2008年6月20日金曜日~7月12日土曜日(全28ステージ)
公演公式サイト
赤坂ACTシアター

作:アントン・チェーホフ
演出:栗山民也
翻訳:沼野充義

全席指定
S席10,000円
A席7,000円

べきら観劇日:
2008年7月3日木曜日夜の部

上演時間:約2時間50分(20分間の休憩1回を含む)
舞台が観やすい客席構造とは対照的にロビーは評判通りたいへんせまく、20分間と長めの休憩時間でもトイレと飲食販売の行列が交錯して身動きできないほどの大混雑状態でした。
ガラス張りの壁の外には人影がほとんどない広々とした空間が見えるだけに、いっそう閉塞感がつのります。
ロビー(1階)と出口(2階)のあいだの階段は屋外階段と連続した構造で、屋内と屋外はガラス壁が仕切っているだけなので、このガラスをすべて開放して(私達観客を)外に出させてほしい!と(建築構造上無理でしょうが)切実におもいました。
(実際には、喫煙客のために階段下の一隅から屋外に出られる構造になっているようでした。)
先月6月のコクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』があまりにも楽しかったので(べきらによるレポ→)、その勢いで申し込んでしまった来月9月の『赤坂大歌舞伎』(公演情報)がこのあたりをどのように工夫してくれるのか、期待と不安が半々です。

【物販】
・プログラム1,500円
・プログラム+トートバッグ2,000円
※べきら「プログラム1部ください」
販売員男性「プログラムだけでよろしいですか?」
べきら「(?)あ、はい……」
彩の国さいたま芸術劇場ですと「トートバッグあり」が刷り込まれているのですが、新劇場なのですっかり油断してしまいました。
「あの、トートも……」といいかけたものの販売員男性はすでに「……だけでよろしいですか?」と次の客に取り掛かっていて、ゆく川の流れを逆行させることはできませんでした。
トートバッグ、痛恨の買い逃しでした。
・雑誌『すばる』2008年7月号880円(沼野充義新訳チェーホフかもめ収録)
・神西 清訳『かもめ』(新潮文庫)400円
ほか、いろいろ


かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)
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